
宝石の輝きに潜む影:アブレージョン
光を受けて美しく輝く宝石たち。丁寧に研磨されたその面は、光を巧みに屈折させ、虹のように様々な色を放ちます。しかし、その眩い輝きの裏側には、普段目にすることのない別の顔が隠されていることがあります。「アブレージョン」と呼ばれる、宝石の表面につく微細な傷です。まるで鏡面のように磨き上げられ、完璧な輝きを放つように見える宝石でさえ、よく見ると小さな傷を持っていることがあります。これらの傷は、研磨の過程で避けられない場合もあれば、長年の使用による摩耗によって生じる場合もあります。肉眼ではほとんど見分けがつかないほど小さな傷であっても、光の反射を乱してしまうため、宝石本来の輝きを曇らせてしまうことがあります。宝石は、自然が生み出した奇跡であり、長い年月を経て地上に姿を現します。そして、人の手によって研磨され、初めてその真価を発揮します。傷一つない完璧な宝石はほとんど存在しません。しかし、その小さな傷の一つ一つが、その宝石が歩んできた歴史を物語っているとも言えるでしょう。アブレージョンは、宝石の輝きを損なうものではありますが、同時に、その宝石の個性として愛でていくこともできるのではないでしょうか。