ダイヤモンドの輝きに潜む「クリベージ」
ダイヤモンドは、その類まれな硬さから「世界一硬い物質」として広く知られています。しかしながら、ダイヤモンドは意外な一面も持ち合わせています。それは、特定の方向に対して非常に脆く、容易に割れてしまうという性質です。
ダイヤモンドは炭素原子がきちんと規則正しく配列して結晶化した構造をしています。この構造は非常に強く、あらゆる方向からの力に対して高い強度を示します。しかし、まるで木材の年輪のように、結晶が成長する過程でわずかな歪みが生じ、特定の方向に力が加わるとその歪みに沿って簡単に割れてしまうのです。
このダイヤモンド特有の性質を「劈開(へきかい)」と呼びます。ダイヤモンドをカットする職人は、この劈開を利用して原石を研磨し、美しい輝きを持つ宝石を作り出します。ダイヤモンドの硬さと劈開という一見相反する性質は、自然が生み出した精巧な構造と、それを最大限に活かす人間の技術の融合によって、私たちにまばゆいばかりの輝きをもたらしてくれるのです。