柘植:時を超えて愛される木
日本の山野に、緑の葉をたたえる常緑広葉樹、柘植。その姿は、特に西日本の風景によく馴染んでいます。人の背丈ほどに育つこともあり、古くから庭木として親しまれてきました。柘植は、ただ庭を彩るだけでなく、人々の暮らしに寄り添うように、様々な道具の材料としても重宝されてきました。緻密で硬く、簡単には割れないという特徴を持つ柘植の木材は、印鑑や版木など、細かな細工を必要とするものに最適でした。長く使い続けることで、表面につややかな光沢が生まれていくのも柘植の魅力の一つです。その美しさから、櫛や数珠、将棋の駒など、人の手に触れ、時を重ねるごとに味わいを増していくものにも用いられてきました。柘植の木材は、淡い黄色の色合いをしています。ゆっくりと時間をかけて、飴色に変化していく様は、まるで人の人生そのものを表しているかのようです。