
日本の暮らしと文化を支えた桑
蚕は古くから日本で飼育されてきた虫ですが、その蚕が食べるものといえば桑の葉です。蚕は桑の葉しか食べることができず、良質な絹糸を生産するためには、新鮮な桑の葉を十分な量与えることが重要です。
桑は東アジアが原産の落葉樹で、日本各地の山や野原に自生しており、古くから人々の生活と密接に関わってきました。高さは10メートルを超えることもあり、成長すると太い幹と大きく広がる枝が特徴です。蚕を飼育するために畑に植えて低木の状態に保たれることが多いですが、本来は高く成長する木なのです。
春になると桑は新しい葉を茂らせます。蚕を飼育する農家の人々は、その葉を丁寧に摘み取って蚕に与えます。蚕は桑の葉をむしゃむしゃと音を立てて食べ、すくすくと成長して立派な繭を作ります。そして、その繭から美しい絹糸が紡ぎ出されるのです。このように、蚕と桑は切っても切れない関係にあり、日本の絹産業を支えてきました。