死の象徴

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死を想う宝石、Memento Mori

「死を想え」という意味を持つラテン語の言葉、Memento Mori(メメント・モリ)。それは、私たち人間にとって避けることのできない「死」を常に意識の中に留めておくための、ある種のメッセージとして、古くから様々なかたちで表現されてきました。時代は古代ローマにまで遡り、戦争に向かう兵士たちが「お前も必ず死ぬことを忘れるな」と、互いに戒め合った言葉だとも言われています。 中でも、14世紀から16世紀にかけてのヨーロッパでは、ペストの大流行によって多くの人々が命を落としました。人々は死の恐怖と隣り合わせに暮らし、「いつ死が訪れてもおかしくない」という切迫した状況の中で、Memento Mori(メメント・モリ)は強く意識されるようになったのです。そして、絵画や彫刻、建築、墓碑など、様々なものに「頭蓋骨」「砂時計」「しおれた花」といった死を象徴するモチーフが刻まれ、描かれました。 これらのモチーフは、単に死への恐怖を煽るためのものではなく、「有限である人生をどのように生きるか」「本当に大切なものは何か」を問いかける、道しるべのような役割を担っていたと考えられます。死を意識することは、今を生きることの尊さを私たちに気づかせ、日々の生活に感謝の気持ちや、より良い人生を送るための行動を促してくれるのではないでしょうか。