エッチング:腐蝕が生み出す芸術
- 腐食を利用した技法
エッチングは、金属の表面を腐食させることで模様を描き出す、繊細で美しい芸術技法です。
金属は、種類によって酸やアルカリなどの薬品に対する強さが異なります。例えば、銀や銅は硝酸や硫酸などの酸に触れると容易に溶け出しますが、金やプラチナはこれらの酸に対して強い抵抗力を持ちます。エッチングでは、こうした金属の性質の違いを利用します。
まず、腐食させたくない部分に防食剤(レジスト)を塗布します。レジストは、酸の作用から金属表面を保護する役割を果たします。次に、レジストを塗布していない部分を薬品に浸します。すると、薬品に触れた金属表面は溶け始め、腐食によって次第にくぼみが生まれます。このくぼみが、最終的には模様となるのです。
エッチングは、腐食という金属の「朽ちていく様」を逆手に取った技法と言えるでしょう。薬品の種類や濃度、腐食時間を調整することで、思い通りの深さや形状の模様を彫り出すことができます。こうして生み出された模様は、まるで金属に息吹が吹き込まれたかのような、独特の風合いを醸し出すのです。