
鼈甲 – 幻の美
鼈甲とは、海に生息するウミガメの一種、タイマイの甲羅を加工して作られる貴重な素材です。その歴史は古く、古代エジプトの時代から装飾品として人々に愛されてきました。日本でも、奈良時代にはすでに工芸品に用いられており、鼈甲細工は長い歴史を持つ伝統工芸として、現代に受け継がれています。鼈甲の最大の魅力はその美しさにあります。黒褐色を基調として、黄色や茶色の斑点や縞模様が複雑に混ざり合い、自然が織りなす芸術的な美しさは、見る人を魅了してやみません。また、鼈甲は美しいだけでなく、硬くて丈夫な性質も持ち合わせています。さらに、加工がしやすく、磨き上げると美しい光沢を出すこともできるため、古くから櫛やかんざし、眼鏡のフレームなど、様々なものに用いられてきました。 近年、タイマイの保護が国際的に叫ばれるようになり、鼈甲の入手は非常に困難になっています。そのため、現在では、アンティークとして扱われることが多く、その希少性から、高い価値がつけられています。