揺るぎない心を育む、金剛菩提樹
悟りを開いた者を象徴する木として、仏教において菩提樹は特別な存在感を放っています。中でも、釈迦が悟りを開いたとされるインドボダイジュは、仏教徒にとって聖なる木として崇められています。同じ菩提樹の一種である金剛菩提樹もまた、仏教と深い関わりを持つ一方で、ヒンドゥー教においても重要な意味を持つ興味深い存在です。
インドでは、金剛菩提樹の実はルドラクシャと呼ばれ、破壊と創造の神であるシヴァの涙とされています。シヴァ神は瞑想に深く耽る神として知られていますが、ある時、瞑想から目覚めたシヴァ神の目から慈悲の涙がこぼれ落ち、それが地上に落ちて金剛菩提樹の実になったと伝えられています。
このように、金剛菩提樹は仏教においては悟りの象徴、ヒンドゥー教においては神の涙とされ、全く異なる二つの宗教の中でそれぞれ神聖なものとして大切にされてきました。まるで二つの宗教の橋渡しをするかのように、人々の信仰を集めてきた金剛菩提樹とその実は、古くから人々の心に寄り添い、精神世界を豊かにしてきたと言えるでしょう。